スマートフォンの価格が以前より高くなりました。昔のように、気軽に機種変更ができなくなった、そう嘆く方も多いです。その傾向は、今後さらに加速しそうです。
「AI需要の高まり」
大きな理由のひとつは、「AI需要の高まり」です。IT業界は、毎日AIの話で持ちきりです。気軽に使っているAIですが、このAIのコンピュータはどこにあるのでしょうか?クラウドにあります。基本的には手元のコンピュータで処理はしておらず、どこか遠くにあるコンピュータで計算して処理しています。そのコンピュータの規模はとんでもなく大きいもので、僕らが使っているパソコンやスマートフォンより、遥かに高性能です。
そのコンピュータが足りないため、様々な部品が買われています。作っても作っても足りない、需要が供給を上回る状態なため、コンピュータに使われる部材は、すべて値上がりしています。
すべての部品が値上がりするため、スーパーコンピューターやデータセンターだけの話ではなく、スマートフォンの製造コスト(原価)を押し上げる最大の要因になります。
具体的にどの「部材」が高騰し、どう影響するのかを整理しました。
1. AI需要が直撃している部材と価格への影響
AI需要により、特に以下の3つの重要パーツの価格上昇が懸念されています。
| 部材の種類 | AIによる影響の理由 | スマホへの影響 |
| メモリ (DRAM) | AIサーバーが大量の高性能メモリを必要とし、世界的に在庫が不足。メーカー(Samsungなど)が大幅な値上げを通告しています。 | スマホの動作を快適にするメモリ(RAM)の調達コストが直撃します。特に8GB以上の大容量モデルで影響大です。 |
| 保存容量 (NAND) | データセンターのAI学習用データの保存需要が爆発。これによりスマホ用の保存メモリ(ストレージ)も連鎖的に値上がり傾向です。 | 写真やアプリを保存するストレージ(128GB/256GB等)の単価が上がり、大容量モデルの価格差が広がる可能性があります。 |
| 半導体 (SoC) | AI処理をスマホ自体で行うため、より高度なチップ(脳みそ)が必要になります。製造元のTSMCなどが製造費の値上げを予定しています。 | 「AIスマホ」と呼ばれるハイエンド機種(Pixel ProやiPhone Proなど)の本体価格を数千円〜数万円押し上げる要因になります。 |
2. 隠れたコスト増:熱対策とバッテリー
AI処理はスマートフォン本体に高い負荷をかけ、**「熱」と「電力消費」**を生みます。これに対応するための部材もコストを押し上げています。
- 冷却部品: 高度な放熱シートやベイパーチャンバー(冷却機構)が必要になり、従来の安価な部材では対応できなくなっています。
- バッテリー: AI処理による電池持ちの悪化を防ぐため、より高密度で大容量なバッテリーが求められ、単価が上昇しています。
3. 私たち消費者への影響(2025年〜2026年)
調査会社(Counterpoint Research等)の予測では、AI対応スマホの部品コスト(BoM)は一台あたり約40〜60ドル(約6,000円〜9,000円)上昇するとも試算されています。
- ハイエンド機: 価格転嫁され、さらに高額化が進む(例: 15万円→17万円など)。
- ミドルレンジ機: 価格を据え置くために、メモリ容量を減らしたり、その他の機能を削ったりする「実質的なスペックダウン」が起こる可能性があります。
結論とアドバイス
ご懸念の通り、PC向け部材の高騰は時間差で確実にスマートフォンに波及します。
もし現在、スマートフォンの買い替えを検討されているのであれば、「欲しい機種がセールになっているタイミング」で早めに確保するのが賢明かもしれません。特に2026年モデル以降は、AI関連のコスト増が本格的に価格に反映される可能性が高いです。

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